國學院大學 科学教育方法学研究室(寺本研究室)

小学校における「深い学び」とは?

何が「深い学び」なのか?
~子ども自身が「学び方の質」を高める指導の充実を ~

「深い学び」は、教師が指導をする際に気をつけていく「授業改善の視点」として位置づけられたものというのは既に述べました。しかし、研究授業をみると時々「子どもがどこまで深い学びをするか」というように、「子ども」を主語にして育成したいゴールを中心に検討がなされることがあります。これは、本来の趣旨から考えると、教師の授業のあり方が検討の中心にならなければなりません。とはいえ、子どものゴールが決まらないと教師の指導は立てられません。そこで、一般的に言われている「深い学び」とは何かについて、以下に整理します。

【 深い学び 】
◎ 学習内容の深い理解、知識の概念化
(構造化、一般化、抽象化)
・学習内容の転移などを指し、知識を日常に活かせるようになること
・複数の知識を組み合わせられるようになること
・汎用性のある知識にできること    など

 

これ見ると、これまで主に行ってきた「知識を教える」ことをメインにした指導モデルでは、「深い学び」を誘導しないことがわかります。つまり、学習のある1つ場面だけで学習を終わらせるのではなく、異なった場面を想定しても学習した内容が使えたり、学習した内容を応用して適用できたりすることが求められるといえます。
もともと、「主体的・対話的で深い学び」の考え方は、小学校から高等学校をひとまとめにして理念が考えられています。そのため、他校種と比べ、小学校課程の場合は、発達段階の特性上、多くの学習内容は知識・技能の習得に重点が置かれるため、上述のように知識の活用場面は限られてくるといえます。
また「深い学び」とは、「浅い学び」と対比された言葉です。したがって、ある学習内容における子ども個々の「以前と今」「今とこれから」の学習状況がどのように変化したかなどのように、個人内の相対的な資質・能力の変化や、子ども個々の学習方法の緻密さの程度を指すことになると考えられます。このことから考えると、教師の指導改善の視点ということもあり、これまでのような知識の評価目標のように、学級で一律の深い学びの姿を決めることに意味がるかどうかは疑問です。なぜなら、深い学びを知識の評価みたいに「育成したい学習内容のゴール」で考えると、学習内容や個人の学習状況によって異なり、目標が多様になってしまうからです。また、これからは自律した子どもを育てることが重要になってきます。そのため、「ある一部の学習内容がどれだけ深いか」とか、単に「お互いに説明ができる(説明したした内容)」ことが重要というよりは、「子ども自身が目的達成のためにどれだけ深い学びに繋がる学び方ができるか」の方がより汎用的で、重要になります。
つまり、私は小学校段階における「深い学び」は、子ども個々の資質・能力の変化のために、個々の学習方法がより緻密になるような「子ども自身が学び方の質」を高めることそのものを指すと考えています。学び方の質を高める―そのためには、「主体的な学び」「対話的な学び」が不可欠となるわけです。
図(寺本ら,2016)を見ていただくと、「主体的な学び」「対話的な学び」が成立することで、「深い学び」に繋がり、それが新しい学習者の姿として、求められる資質・能力の育成へと導いていることがわかります。


(1)主体的な学び

主体的な学びは、「自分自身で判断し行動できること」が重要です。自分自身で行動するためには、まずは自分自身の「問題意識」をもっていることが必要になります。なぜならば、自分自身の問題意識をもってはじめて、自分のやりたい方向性が明確になり、やる気につながるからです。車でいうと、エンジンといえるでしょう。しかし、やる気だけではその先の解決にはつながりません。なぜならば、自分自身で判断し行動する際に必要な「知識・技能」や、自分自身で判断し行動する際に必要な、ものの解釈や認識のしかたである「とらえ方」や、考える方法や状況に対する反応のしかたである「考え方」も必要だからです。これらは車でいうと、車の両輪といえるでしょう。
自分自身で判断し問題を解決するにあたって、この3つの要素で自分自身での解決が可能となります。しかしながら、中には自分自身の行動が間違ってうまくいかない場合もあります。その場合は、自分自身を良い方向へ制御する必要があります。そこで、「メタ認知」の要素が必要になります。車でいうと、ハンドルの役割といえるでしょう。このように、深い学びに繋がる「主体的な学び」が成立する条件として、上述の4つの要素が必要になると考えられます。

 

(2)対話的な学び

対話的な学びは、「新たな知識や考え方の共有や創造をすること」が重要です。対話を通して行動するためには、まずは集団として共通の「問題意識」を理解することが必要になります。これは主体的な学び同様、集団としての問題意識を共有してはじめて、集団で追究する方向性が明確になります。また、集団の個々の異なる意見から最適解を選択する判断をするためには、意見が出し合える人間関係や、誰もが納得できる落とし所を見つけるために意見を整理・調整できる「合意形成能力」が求められるといえます。さらに、集団の個々の異なる意見から最適解を選択する判断をする際には、他者の意見の問題点を指摘したり改善点を提案したりする「批判的思考」ができることも求められるといえます。このように、深い学びに繋がる「対話的な学び」が成立する条件として、上述の3つの要素が必要になると考えられます。

 

【参考・引用文献】

 

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